「クルマ好きの建築家と出会えてクルマ趣味のための家が実現。」
所在地/奈良県
敷地面積/234.6m2(約71坪)
延床面積/127.0m2(約38.5坪)
ビルトイン台数/1台
ビルトインガレージのすぐ隣にある和室の趣味部屋は、愛車を眺めながら
ご主人がゆっくりくつろいだり、クルマ仲間と談笑する男の空間。
玄関をはさんだ母屋には大きな吹き抜けのリビング。
家族はガレージの喧騒を気にせずに、思い思いに過ごすことができる。
プロデュース会社と二人三脚で理想のガレージハウスが完成した。
雑誌 ガレージのある家 vol.19 掲載
photo / Kazushi-HIRANO(平野和司) text / Kota-TAKEUCHI(竹内耕太)
奈良県郊外。約70坪という広々とした土地に完成したU邸は、ビルトインガレージとそれに隣接した趣味部屋をもち、さらに小型車用の半屋根ガレージ、そしてクルマ好きの仲間が遊びに来ても駐車スペースが約6台分確保できる、クルマ趣味を満喫するためのガレージハウスだ。
▲ U邸で唯一の和室となるガレージ脇の趣味部屋。家のほとんどが白黒ベースのため、アクセントとしてグリーンとパープルのチェックに。ここはUさんだけの憩いの場だ。
取材時はちょうど乗り換えのために愛車を手放した直後で、次なる愛車の選定中。そのためご友人のポルシェにモデルで登場いただいている。
敢えてこのようにお断りするのは、Uさんがずっとオープンのスポーツカーを乗り継いできたクルマ遍歴の持ち主だからである。オープンカーなればこそ、日光や風雨、砂ぼこりによる幌の劣化は切実な問題で、「家を建てる時はガレージを!」との思いを募らせていたとのことだ。
▲ TV台は田中いちろうさんデザインによる造り付け。オーディオの配線など事前に相談して壁の中にまとめてもらいスッキリさせた。
理想のガレージハウスを追求するUさんの努力は、奥様との結婚前から始まっていた。デートでは一緒に住宅展示場、インテリアショップ、雑貨店などを巡って家づくりの勉強をする一方、オープンカーの試乗も積極的に利用して、クルマに興味のない奥様に、オープンカーの楽しさを少しずつ伝え、理解をしてもらえるようにしてきた。「おかげで、車種名は結構分かるようになってもらえました(笑)」と嬉しそうに語ってくれた。
▲ カリン材フローリングを基調としたU邸だが、キッチンはスキップフロアで黒のタイルとし差別化。ハンセム製キッチンはご夫妻で気に入った色を採用している。
これから家族の暮らしを営んでいく上で、自然に恵まれ好環境なこの土地に家を建てようと決めたのは2009年3月。「ありきたりの家ではなく、かっこいい家がいいね」と、最初はハウスメーカーでの家づくりを検討し、住宅展示場巡りをしたUさんご夫妻だったが、やがて「なにか違う」と違和感を覚えたという。ガレージドアなどクルマ好きのこだわるポイントが分かってもらえなかったり、規格としてビルトインガレージが用意されていなかったり、理想のガレージハウスとはかけ離れたものだった。そんなある時、本誌『ガレージのある家』を見たのが転機となったそうだ。
▲ 大きな吹き抜けのリビングは開放感が抜群で、白と黒、ブラウンのカリン材からなる内装は高級感を演出。2階の子供部屋へ通じるブリッジなど、視覚的な変化も楽しめる空間。
本誌11号で紹介されていた「生駒のガレージハウス」を見て「こんなガレージハウスを建てたい」と思ったUさん。それを手がけた住宅プロデュース会社『ザウス大阪店』の見学会にさっそく参加して、相談してみた。
▲ マットなブラックのガルバリウム鋼板で引き締まった印象の外観は、横の広がりを強調したデザイン。写真右手の道路からはガレージと愛車が目隠しされるなど、セキュリティ面も考慮されている。
登録建築家3人によるコンペというシステムが好評な『ザウス』だが、Uさんの場合、ガレージハウスのアルバムを見せてもらって3件ほど気に入った物件が全て、建築家の田中いちろうさんの作品だったそうだ。実際に田中さんと話をしてみて「この人もクルマ好きなんだな」と感じたUさんは『ザウス』でのガレージハウスづくりを決心。プロデューサーと情報交換しながら、理想の家を形にしていった。ヒアリングの後に田中さんから提案されたプランは一発OKで、ほぼそのままの家になったそうだ。
▲ 玄関の門扉も田中いちろうさんデザイン。左手の趣味部屋はガラス張りで、母屋ドアの脇も一部ガラス張り。気配をうかがうことが可能な設計だ。毎年沖縄に行っているUさん夫妻。家の守り神・シーサーは、沖縄まで探しに行き2日がかりで探し出したお気に入りの逸品。
「最初は「とりあえず見てみようか」という感じだったんですが、実際に形になったプランを見たら、ちょっと感動しましたね。これからここに住むんだと、イメージがふくらんでいきました」
▲ 子供部屋は広く確保し、将来はリフォームして2分割も可能なように補強している。階下のリビングをうかがう小窓といった遊び心も。
注文住宅ということで最初は不安もあったそうだが、『ザウス』がきちんと予算のコントロールをしてくれた。「もう少しガレージを大きく」などの要望にも応えた上でうまくコストバランスを取り、現実的に可能なプランにまとめてくれ、安心して家づくりを進めることができたそうだ。
田中いちろうさん
玄関アプローチを中心にして、生活空間と趣味部分は明確に区切られたプランとなっています。畳敷きの趣味室を設け、クルマ雑誌・グッズの収納、友人とのクルマ談義を愛車を眺めながら楽しむスペースとなっています。吹抜けのあるリビングを中心に、1F・2Fの全ての空間がつながり、風通しの良い、開放感のある空間になっています。緩やかなスキップフロアを採用することで、上下方向への変化を加えています。随所にちょっとした工夫を仕掛けることで日常生活にポジティブな刺激を住まい手に与えていけたらと考えました。
U様ご夫妻と初めてお会いしたのは、弊社開催のガレージハウス見学会でした。その当時から、デザインにとても興味をお持ちなお二人でしたが、計画が進むにつれ、更にデザインを追及されるようになりました。フローリングやタイルの素材選びはもちろん、扉の小口の見え方や、スイッチプレートの見せ方など、より専門的な見方を身につけておられました。その思いに応えられるよう、最新の情報をできるだけお伝えできるようにさせて頂きました。U様はもちろんですが、私にとっても愛着のある住まいができました。
所在地 | 奈良県 |
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竣工 | 2010年3月 |
敷地面積 | 234.6m2(約71坪) |
延床面積 | 127.0m2(約38.5坪) |
設計 | 田中一郎建築事務所・田中いちろうさん |
施工 | 株式会社 ウッドワン関西 |
プロデュース | ザウス株式会社・ザウス大阪店 |
ガレージのある家 vol.19 掲載
発行年月日:2010年7月15日
出版社名:株式会社ネコ・パブリッシング