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コラムColumn

【建築主の声】建坪なんと7.1で実現!!その名も「2歩半の家」六甲のガレージハウス

「これからこの家をどうやって住みこなしていくか。家とマッチした新しいライフスタイルを楽しんでいきたいですね」

所在地/兵庫県
敷地面積/39.36m2(約11.9坪)
建築面積/23.57m2(約7.1坪)
延床面積/72.38m2(約21.9坪)
ビルトイン台数/1台

 

これまで本誌で、住宅プロデュース会社『ザウス』による
ガレージハウス成功の実例を数多く紹介してきた。
そして今回は、『ザウス』の原田プロデューサーが
ついに自身のガレージハウスを完成させたという。
それも、土地が11.9坪に建ぺい率が60%、
建築面積が7.1坪という、驚きの超・狭小住宅だ。

雑誌 ガレージのある家 vol.18 掲載
photo / 杉野 圭 text / Kota-TAKEUCHI(竹内 耕太)


▲ 上の写真。敷地の高低差を活かしてスキップフロアとし、リビングは天井を高々と3100mm確保。ダイニングへと続く階段は、腰掛けたり物を置いたりするマルチスペースとして活用できる。
 
センチ単位までこだわって広さを感じる快適な居住空間を実現!今号で紹介している狭小ガレージハウスの中でも、建築面積が7.1坪と最も小さいのがこの物件。神戸市灘区の六甲山が見える住宅街に建つその姿は、真正面から見ると塔のように細長い。1階にクルマを置くことはできても、毎日その脇をすり抜けて家に出入りするのは大変なのでは? そう思ってしまうのだが、実は、この家の反対側も道路に接していて、人が出入りする玄関はそちらになっているのだ。
 
▲ 壁と柱の間の幅は約2.5mで、どうにかクルマの脇を通り抜けられる幅。こちら側は勝手口とし、人が主に出入りする玄関は反対側に設けている。
 
この家の施主は住宅プロデュース会社『ザウス』の原田稔泰さん。日頃、プロデューサーとして施主の相談相手となり、土地探しから建築家のセレクト、施工会社の管理までをトータルでケアしている、家づくりのプロである。
 
そんな原田さんが自分の家づくりを考えた時、交通の至便なこのエリアは第一希望だったものの、土地の坪単価が高いことがネックだった。ならば面積の小さな土地に家を建てればいい。しかも、クルマが雨に濡れないようにガレージはマストで――狭小ガレージハウスは『ザウス』としても数多く手がけている得意分野。そのノウハウを活用しての原田邸プロジェクトが開始した。
 
見つけた土地は敷地面積11.9坪と細長く、クルマ1台が辛うじて収まる幅しかなかったが、南北の両側が道路に面していることが何より大きなメリット。建築条件付きの土地だったのを交渉して、条件を外してもらって購入した。土地代が若干上乗せという形になったが、それだけの価値があると判断してのことである。
 
▲ 壁の代わりにLow-Eガラスを大きく使って空間を広くした原田邸。リビングは木製のブラインドで目隠しをし、キッチンはUVカットのフィルムで、明るく採光するようにした。
 

設計を担当したのは、ガレージハウスの実績が多い建築家の藤原誠司さん。人とクルマの両方のスペースを確保するには狭かったが、二方向道路という敷地環境を活かし、クルマと人の出入口を分けることによってゆとりが生まれた。1階には出入口の他、お風呂に洗面台と最小限必要なものを収め、トイレは3階に設置。暮らしの中心となる2階のリビングは、敷地の高低差をそのまま活かしてスキップフロアとすることで、天井高3100mmと実に広々とした空間を確保することができ、ダイニングへとつながる空間に奥行と変化を与えることができた。

また、全ての部材を細く、軽やかに見せるように意識し、ディティールを繊細にすることで空間を広く見せている。階段は、圧迫感を与えたり動線を犠牲にしないように、1枚の鉄板を加工して作ってもらいスッキリ収めている。

▲ 玄関の内外ともに、中国の古い工場を解体した際に出てきたという古レンガを使用。ドアの脇をガラス張りにし、空間を少しでも広く見せている。玄関脇の靴箱も、奥の背板を作らないことにより空間をセンチ単位で有効活用している。靴箱の上は趣味の自転車を格納するスペースとなる。
 
一般的な住宅ではLDKなど、空間の境界があいまいなことが多いのだが、原田邸ではしっかり空間を分けることで無駄な空間を省き、ゆとりをもって暮らすことができるように工夫した。
 
家の内外ともに印象的なオリーブグリーンで統一された壁面は、デザイン性だけではなく、中に給湯器やエアコンの室外機、配管類を収納することでスペースの節約につながっている。リビングには蛍光灯やダウンライトを設けず、最小限の照明で落ちついた癒しの雰囲気を演出している。
 
▲ 3階は主寝室と予備部屋。斜めの屋根との間の空間には収納用のロフトを設置し、洋服の収納用にハンガーを取り付けるなど、スペースの有効活用は徹底している。
 
リビングを広く見せている工夫のもう一つが、2面の壁をガラスにしたことだ。壁と比べて内部空間を大きく確保できる上に採光性も十分。そして夏場の暑さ対策として、Low-Eガラス(低放射ガラス)を採用している。これは遮熱性・断熱性に優れたガラスで、コストはその分増えてしまうが、住宅の基本性能に関わる部分なので惜しまずに採用したそうだ。
 
壁の部分にも遮熱・断熱性能を高めるために一工夫し、住み心地は犠牲にしないよう配慮している。また、垂直方向に細長い建物であるので、基礎も1.5mほど掘ってしっかり造成するなど、大事なところは手を抜かずしっかりコストをかけ、節約できる部分は節約。トータルでのコストコントロールは『ザウス』の住宅プロデュースの大きなメリットであり、この原田邸においてもその実力が発揮されているのだ。
▲ 3階への階段は1枚の鉄板を加工して作ってもらった特注品。スマートなデザインと強度を両立させるのに苦労したこだわりの逸品。
 

「これからこの家をどうやって住みこなしていくか。家とマッチした新しいライフスタイルを楽しんでいきたいですね」と語る原田さん。これからが理想の家づくりの第2ステージである。

 
 

ガレージハウスの施工例はこちらから

 

 

ここがお気に入り
2階のリビングを中心とした空間全体が、とても居心地よく快適になりました。ちょっとスキップがあるのもポイントです。

ちょっと失敗
今のところ、特に見つかりません。

読者へのアドバイス
土地は11坪もあれば十分に家が建ちます!しかもガレージ付きで! 夢のある家、楽しい家をつくりたい方、興味があればお気軽に『ザウス』へご相談ください!!

 

藤原誠司さん

狭小住宅では階段が占めるスペースは、全体に対して大きくなります。リビングやお風呂は小さくできても、階段の大きさは法律で決まっているので限界があるのです。そこで、この建物ではスキップフロアを採用して階段をリビングの床の延長として感じられるようにし、できるだけその存在を意識させないようにしました。さらにこだわったのが階段のデザインです。階段のデザインをなるべく細く、繊細にすることで、空間を広く見せることができました。

 

所在地兵庫県
竣工2010年3月
敷地面積39.36m2(約11.91坪)
建築面積23.57m2(約7.12坪)
延床面積72.38m2(約21.89坪)
ガレージ面積11.57m2(約3.5坪)
設計一級建築士事務所 フジハラアーキテクツ・藤原誠司さん
施工株式会社じょぶ
プロデュースザウス株式会社・ザウス大阪店

 

ガレージのある家 vol.18 掲載

発行年月日:2010年4月15日
出版社名:株式会社ネコ・パブリッシング

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