「家としてしっかりつくるべき所、こだわりたいポイントにはきちんとコストをかけ、コストを抑えられる所は抑え、思ったよりも安くガレージハウスを手に入れられた。」
所在地/大阪府柏原市
敷地面積/96.79m2(約29.3坪)
延床面積/86.12m2(約26.1坪)
愛車(取材時)/1991年式MINI 40th、2004 年XL1200R、2006年式FXDI 35th
ビルトイン台数/1 台
だれと、どのように”ガレージのある家”を建てようかと思案し、
いろいろな方法を探っている人は少なくないだろう。
今回のTさんも、土地探しをきっかけにプロデュース会社を知り、
クルマが好きな建築家・田中いちろうさんと出会って、家を完成させた。
雑誌 ガレージのある家 vol.17 掲載
text / Kota-TAKEUCHI(竹内 耕太) photo / Kazushi HIRANO(平野和司)
大阪府の郊外に念願のガレージハウスを建て、今年の8月末に入居したばかりのWご夫妻。それまでは大阪市中心部のデザイナーズマンションで、コンクリート打放しの部屋に3年ほど住んでいた。「そろそろ自分達の家を建てたい」と検討し始めた時にイメージしたのは、今までのシンプルモダンから一転して、木のぬくもりを基調とした、和の雰囲気の落ち着く空間だったのだそうだ。その際に必要不可欠な条件となったのは、バイク2台とクルマ1台、それに自転車を収納することのできるビルトインガレージの存在である。さらにご実家の近くに建てたいという要望と、総予算の枠内という制約の中、ハウスメーカーなどを色々とあたってみたものの、芳しい反応は得られなかった。
そこで、本誌を読んで知っていた住宅プロデュース会社『ザウス』に相談してみたのが、2008年のゴールデンウィーク前のことだった。土地探しから建築家への依頼、資金計画の相談、そして予算内でのコストのコントロールまで、プロの視点からサポートを受けることができるという心強さと、何より、実際にガレージハウス物件を数多く手がけてきているという実績が決め手となり、『ザウス』をパートナーにガレージハウスづくりを進めていくことにした。
ザウスのプロデューサーと一緒に土地探しからスタートしたW邸のプロジェクト。ガレージハウスを最初から想定しているため、土地の条件には妥協したくなかったという。ご実家の近くであること、ガレージの面する道路が北側にあること、敷地奥のリビングが南に面すること、さらに光の入り方にもこだわった。これらを満たす土地に決めたのは半年ほど経過した2008年末のことであった。
また、土地探しと同時進行で建築家への設計依頼も行っている。『ザウス』では登録建築家3人によるコンペ方式が好評だが、Wさんの場合、登録建築家たちの作品事例をじっくりと比較検討した末、和モダンの雰囲気が魅力のガレージハウス例がある建築家・田中いちろうさんをパートナーに選んだ。Wさんは以前、『ザウス』の見学会で田中さんの手がけたガレージハウスを見て、「スキップフロアがいいな」と思ったそうだ。屋内を画一的に区切ってしまうのではなく、ガレージと居室をゆるやかにつなぐ、リズム感のある空間構成が気に入ったのだ。
土地を購入する前の段階から建築家に入ってもらうことで、その土地ではWさんのイメージがどのように具体化するのか、あるいは実現可能な土地なのか否か、というアドバイスを受けることができた。さらにそのプロセスで家のイメージをすり合わせて共有していくという、理想的な形でプロジェクトが進行していったのである。
ハーレーダビッドソンを愛機とするWさんは、ガレージにはアメリカのバックヤードのような雰囲気を求めていたという。バイク雑誌を田中さんにも見てもらうなどし、和風モダンとアメリカン・テイストが融合したガレージを実現することができた。面積の関係上、最初はガレージにバイクの収納だけを考えていたが、「これならミニが入るな……」と設計を一部変更してもらって、廊下の下にミニのフロントを入れるという今の形になったそうだ。
玄関からガレージを見下ろしつつ廊下を進み、階段を2階へ上る途中には、スキップフロアのチャイルドルームがある。これは現在はご夫婦の寝室として使われているが、7.5 帖と大きめの設定のため、将来はお子様用に2つに間仕切りすることも可能となっている。2階には家族の憩いの場となるリビングと、曲面に包まれたくつろぎの空間となるロフトがあり、全体が木材のぬくもりにおおわれた落ち着く空間となっている。障子などの建具は今はあえて設置せず、家全体の空間的なつながりを重視しているが、必要に応じて簡単にリフォームできるように配慮されているのが、W邸の特徴と言えるだろう。家が建った時に100%完成させてしまうのではなく、将来のライフスタイルに合わせてアレンジしていけるフレキシビリティを確保しているのだ。
家としてしっかりつくるべき所、こだわりたいポイントにはきちんとコストをかけ、コストを抑えられる所は抑え、思ったよりも安くガレージハウスを手に入れられたとW さんは振り返る。「自分だけではできませんでした。土地の購入以前から全体の予算をコントロールしてくれる『ザウス』のプロデューサーという存在が心強かったです」。
田中いちろうさん
ガレージハウスの設計において、重視していることは、室内からのガレージとの繋がり方です。リビングからお気に入りのクルマをいかにおしゃれな角度でみせるか、また、書斎コーナーから、スムーズに出入り出来るか等々です。今回のW邸では地階ガレージに収納されたMINIとハーレー2台と生活空間を繋ぐ手段としてスキップフロアを採用しました。最上階のリビングからも地階のガレージの雰囲気は感じる事は出来るようになっています。ご夫婦の和モダンとアメリカンの融合という要望に対しては、ラワンベニヤ、木毛セメント板等、少しクセのある材料を選択することで、ざっくりとした存在感のある空間に仕上がってます。
決して広い住まいではありませんが、無駄なスペースに無駄なコストを掛けることなく、住まい手のライフスタイルにひとつひとつ合わせて造られていますので、家のどこにいても家族の雰囲気が感じられる、非常に落ち着ける住まいとなりました。アメリカンなガレージ、黒川温泉をイメージした浴室、アメリカンと和モダンが融合した、個性とこだわりの溢れる住まいです。笑いの絶えない打合せで、住まいづくりの経過をご夫婦、建築家も含めて皆で楽しみました。
所在地 | 大阪府 |
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竣工 | 2009年8月 |
敷地面積 | 96.79m2(約29.3坪) |
延床面積 | 86.12m2(約26.1坪) |
ガレージ面積 | 14.9m2(約4.5坪) |
愛車(取材時) | 1991年式MINI 40th、2004 年XL1200R、2006年式FXDI 35th |
設計 | 田中一郎 |
施工 | 建築工房アクトホームズ |
プロデュース | ザウス株式会社 |
ガレージのある家 vol.17 掲載
発行年月日:2009年11月14日
出版社名:株式会社ネコ・パブリッシング